新聞に載るということは、こんなにもすごいことだったのか!
前回のシンクローカル「卒業しても愛がある」(6月30日付)が掲載されて以降、エノモトくんとナンキさんのもとには「新聞見たよ」「がんばってるね」などと多くの声が寄せられた
エノモトくんは、東京・世田谷区の実家にいる母親から「新聞送って」と頼まれたことが嬉しかった。こういうことも親孝行になるのだろうか
出雲市内で両親と同居するナンキさん。いつかエノモトくんに真剣に尋ねてみたかったことがある。「自分が東京人だったら、島根に行こうと思っただろうか。エノモトくんが島根行きを決めた理由を知りたい」
当時中学3年生だったエノモトくんが初めて「しまね留学」を知ったのは、通っていた世田谷区の塾に貼ってあった島根中央高校(島根県川本町)の生徒募集のポスター。塾を経営する尾糠清司さんは川本町出身だった
エ:僕たちも参加させていただいた「マイプロジェクト」。身の回りの課題や関心をテーマに、プロジェクトを立ち上げ、実行することを通して学ぶプログラム……でしたよね?
鈴木隆太さん(以下―鈴):そうだね。島根県内の高校が、主に「総合的な探究の時間」で、実践型探究学習に取り組むようになったことも影響して、参加する高校生が年々増えてきています
ナ:私も、生徒会メンバーが意見を言いやすくするためのプロジェクトや、同級生の将来の夢や目標を集めて形に残す卒業制作プロジェクトを立てて活動しました。合宿などで大学生や大人に「実はこう思っているんだ」と普段、親や先生に言えなかったことを打ち明けても真剣に話を聞いてくれたことが印象に残っています
エ:雲南市とカタリバは、これまでどんな活動をされてきたんですか
鈴:雲南市の教育支援センター(おんせんキャンパス)と市内高校を中心に、教育委員会、学校の先生と一緒に「日本一チャレンジにやさしい教育環境づくり」に取り組んでいます。実践型探究やオンライン学習を活用して、雲南の魅力ある地域の大人が行動や考え方の手本になる「ロールモデル」として子どもたちに出会い、親でも先生でもない「ナナメの関係」として接する機会をつくっています
ナ:「ロールモデル」になりうる大人に出会えると「こんな風になりたい」と自然に憧れてしまいます。話を聞いてくれるだけで嬉しいし、チャレンジしたことを褒めてくれたり、応援してもらえたりするだけで自己肯定感が高くなりますよね
鈴:2人みたいにもっと挑戦したい子どもたちには課題解決に取り組む人材を養成する、雲南市の「スペシャルチャレンジ制度」に参加してもらい、どんどんまちの未来を切り開いてほしいです
エ:同時に不登校支援、学校に行きづらい子どもへのサポートもされている
鈴:誰もが学びとつながれる環境を目指しています。学校に行きづらい子どもにも農業体験や地域行事への参加など地域と接する場をつくります。NPO・地域・学校が一体となって子どもを「誰ひとり取り残さない」ような学びの仕組みづくりの最中です
ナ:地域と学校とカタリバがそれぞれに協働するからこそ成り立っているんですね。すごいですね
鈴:そうだね。地域全体で子どもたちの教育を支えていくことが雲南の寛容さや多様な文化を子どもたちに引き継いでいくことに繋がると思っています
エ:雲南市では「地域自主組織」などの取り組みにより、市民一人ひとりがまちづくりに参加することが大事にされていますよね
鈴:2019年には「雲南市チャレンジ推進条例」が制定され「子ども×若者×大人×企業チャレンジの連鎖」による持続可能なまちづくりに取り組んでいます。ここは僕たちのような移住者にも寛容でチャレンジできる土地です。この土地の風土に僕たちは支えられています